今月の臨床 ホルモン補充療法を再考する
Women's Health Initiative(WHI)
3.WHIを考慮したHRTの適応とインフォームド・コンセント
久具 宏司
1
,
矢野 哲
1
,
武谷 雄二
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.777-781
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100897
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はじめに
Women's Health Initiative(WHI)は閉経後女性における疾患の予防対策の総合的な評価を目的とした臨床試験で,米国の50~79歳の健康な一般閉経後女性を対象としてホルモン補充療法(HRT)の効果を包括的に評価するものである.HRT群8,502人と対照群8,106人で開始し8.5年間を予定研究期間としていたが,平均試験期間5.2年の時点で浸潤乳癌発症のリスクがHRT群においてあらかじめ設定した範囲を逸脱して高いことが判明したため中止された.浸潤乳癌のほかにも,冠動脈疾患,脳卒中,静脈血栓症のHRT群での発症リスクが対照群に比し上昇し,結腸直腸癌,大腿骨頸部骨折でリスクが低下したことを考慮しても,HRTにより全体的な健康上のリスクがベネフィットを上回ることとなった.本試験が大規模無作為化対照試験(randomized controlled trial)の形式で行われた以上,今回の結果はエビデンスとして重要な位置を占めるものとなるであろう.
なお並行して開始された子宮摘出後の女性に対するエストロゲン単独投与の試験に関しては現時点でリスクの上昇はみられておらず,現在も継続中である.
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