今月の臨床 不妊治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
EBMからみた一般不妊治療
6.男性不妊に薬物療法は有効か?
岡田 弘
1
1帝京大学医学部泌尿器科
pp.1385-1389
発行日 2003年11月10日
Published Date 2003/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100788
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精路閉塞による無精子症に起因する不妊患者に対する精路再建術や,精索静脈瘤がある不妊患者に対しての内精静脈結紮術のように,不妊原因の明らかな疾患に対する外科的療法はその適応に異論を挟む余地はない.同様に,男性不妊(夫側に原因がある不妊症)に対する薬物療法も,不妊原因が明らかなものと未だ不妊原因が明らかでないものに分けて考えなければならない.本稿では,男性不妊患者に対する薬物療法の実際をそれぞれの疾患の診断方法とともに具体的な処方例を示して概説する.
原因の明らかなもの
1. 勃起障害(erectile dysfunction)
EDがあるために性交による妊娠ができないカップルがどのくらい存在するかは,疫学的調査がなされていないため不明であるが,白井ら1)の報告による日本における勃起障害患者数推計によれば,全年齢におけるED患者総数の推計数1,000万人超のうち,生殖年齢である30歳台にも数万人の患者が存在すると報告されている.また,平成11年度の厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)報告によれば,不妊原因の実に20.7%が勃起障害によると報告されている2).したがって,決して不妊原因としては少ない数ではなく,不妊患者カップルの病歴聴取時には必ず性機能に関しては尋ねる必要がある.EDに関して医療機関に相談することが次第にタブーでなくなり,最近の男性不妊外来ではカミングアウトしてくる患者数が急増している.
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