今月の臨床 産婦人科臨床の難題を解く─私はこうしている
II 不妊治療
【一般不妊治療】
10.男性不妊に薬物療法は有効か?
吉田 淳
1
,
中村 拓実
1
,
渡邊 倫子
1
,
鈴木 幸成
1
,
岩本 豪紀
1
,
両角 和人
1
1木場公園クリニック
pp.492-497
発行日 2008年4月10日
Published Date 2008/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101733
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1 はじめに
男性不妊症の薬物療法の有効性を評価するためには,プラセボを使用したケースコントロールスタディが理想的である.しかし,すぐに子どもを希望している症例にプラセボを使用することは,倫理的な観点からも難しいため,randomized control test(RCT)で有効性が確認された薬物は非常に少なく,患者の希望や経験的に使用されているものが多い.男性不妊症で薬物が利きづらい理由は,精巣の精細管内ではセルトリ細胞(支持細胞)同士がタイトに結合して血液精巣関門を形成しているため,使用した薬物が精細管のなかに入りづらいためである.このように薬物療法を行うには厳しい環境にあるが,逆の観点からみると精細胞は外からの影響を受けないように守られているといえる.薬物療法の有効性を判定するためには精液検査を実施することになるが,精液検査の結果は日によって大きく変動するため,有効性を検証するのは非常に難しい.また,薬物療法の有効性を判定する指標として妊娠を指標とすると,女性側の不妊症の原因の有無,またはその程度によって妊娠の成立が大きく左右されるため,効果判定をするのが非常に難しい.
男性不妊症の薬物療法は大きく分類すると,ホルモン療法と非ホルモン療法があるが,本稿では2006年のJournal of UrologyにKumarら1)によって書かれた総説を中心に,実際にわれわれが使用している方法について述べる.
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