今月の臨床 症例から学ぶ前置胎盤
前置胎盤の帝王切開─私の工夫
2.子宮筋層切開部位の設定と胎盤娩出後の出血対策
吉田 幸洋
1
1順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科
pp.1368-1371
発行日 2004年11月10日
Published Date 2004/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100669
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はじめに
前置胎盤では帝王切開での分娩は必須である.前置胎盤の症例に対する帝王切開でも,可能であれば子宮下部横切開法を行うが,胎盤が前壁付着の場合や,後壁付着の場合であっても内子宮口を被った胎盤が子宮の前壁にまで回りこんでいるような場合は,胎盤実質上の子宮筋層に切開を加えると,羊水腔に達する前に胎盤の実質と胎児面に切開を加えなければならず,この場合は胎児失血の可能性がある.一方,前置胎盤の症例に対する帝王切開の最大のリスクは,胎盤の付着部がもともと収縮力の弱い子宮下部であることであり,胎盤剥離後にコントロール不能の大量出血となる場合が少なくない.もちろん,癒着胎盤であった場合の出血が止血困難となることが多いことは知られているが,前置胎盤では,必ずしも組織学的に癒着胎盤でなくても,通常の帝王切開よりも胎盤剥離後の出血が多くなる場合が多い.
したがって,前置胎盤の症例に対する帝王切開では,胎盤娩出後の出血に対する備えと胎児を娩出するのに加えるべき子宮筋層切開の場所の設定ということが工夫すべきポイントということになる.本稿では,現在,順天堂浦安病院で行っている方法について紹介したい.
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