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静岡県立総合病院は,県立中央病院,県立富士見病院を統合する形で,昭和58年に現在の地に創設された.本院産婦人科の起源は静岡県立中央病院に遡り,昭和34年,後藤忠雄により創られた.そののち,横山重喜を経て,現在,小生(籠田)が責任者の立場にある.後藤は敬虔なクリスチャンであると同時にリベラリストであった.小生は,後藤が県立中央病院長在任中に赴任し直接指導を受けた.彼は,文献などにより新しい技術を取り入れることに積極的であり,若い医師に自分の持っている技術を惜しみなく伝えた.小生も赴任してほどなく,自ら夏目(岐阜大学夏目操氏)式と称されていた後藤式の広汎子宮全摘術を直接指導していただいた.現在の私があるのも,若いときからどんどん手術を執刀させていただいた後藤先生,後藤先生の精神を引き継がれた横山先生のおかげと,深く感謝している.
南木佳士氏は,「医師が一生涯に得る全知識の80%は最初の2年間で獲得する」と彼の著書『信州に上医あり』のなかで述べている.いくら頑張っても,はじめの2年間で得た知識の1/4しかその後の一生涯で増えないということである.これは至言である.ところによっては,若い医師になかなかメスを持たせたがらない施設もあると仄聞する.しかし,若い医師を大きく育成しようとするならば,彼らのやる気,向学心を損なうことのないよう,意欲の赴くまま思う存分に働いてもらう,上に立つ医師は自分の経験をあらゆる機会を通じて若手に伝達する,それに尽きると思う.この後藤先生,横山先生の精神を次の世代に引き継いでいこうと思っている.ちなみに,兵庫県立尼崎病院棚田省三部長,倉敷中央病院高橋晃部長,神戸市立中央市民病院伊原由幸部長はいずれも後藤門下である.
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