今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策
母体感染の管理と対策
2.MRSAの管理
藤森 敬也
1
,
浅野 仁覚
1
,
佐藤 章
1
1福島県立医科大学産婦人科学教室
pp.13-17
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100488
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MRSAの疫学
ブドウ球菌による感染症は,化膿性髄膜炎や敗血症などの深部感染症として新生児や免疫機能の低下した患者に認められてきた.1941年に発見されたペニシリンはこれを解決したかに思えたが,その2~3年後にはペニシリン分解酵素(ペニシリナーゼ)を持つブドウ球菌の発生の増加が認められるようになった.その後,ペニシリンのほかにもクロラムフェニコールやテトラサイクリン,マクロライドなど新たな抗生物質が開発されるたびに新たな耐性菌の出現に悩まされてきた.
MRSA(methicillin―resistant Staphylococcus aureus)とはその名が示すとおり,メチシリン耐性の黄色ブドウ球菌である.メチシリンは,ペニシリン耐性グラム陽性球菌に対する切り札として,1960年から実用化されたが,MRSAの発生の報告はそのわずか1年後であった.しかし,本邦においてメチシリンはあまり使用されず,経口投与可能なセフェム剤が主に使用されてきたため,メチシリン耐性とはいうものの実際にはセフェム剤耐性のことを指している.問題化してきたのは1980年代,すなわち第三世代セフェム剤の使用の増加からであり,第三世代セフェム剤のグラム陽性球菌に対する抗菌力が第一世代・第二世代セフェム剤よりも弱いにもかかわらず,グラム陽性球菌に対して単剤で使用を続けてきたことが耐性菌(MRSA)発生の原因と考えられた.
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