今月の臨床 腫瘍マーカー─基礎知識と診療指針
実地臨床応用が期待される新たな腫瘍マーカー―バイオマーカーとしてのゲノム変化を中心に
平沢 晃
1
,
進 伸幸
1
,
青木 大輔
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.1383-1387
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100416
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はじめに
婦人科領域では多くの腫瘍マーカーが利用されており,日常診察において欠かせない存在になっている.
子宮頸癌や子宮体癌では,直接的に細胞や組織を採取し診断することが比較的容易であるため,治療効果の評価や再発の早期発見の目的で腫瘍マーカーを利用することが多い.一方,卵巣は腹腔内臓器であることから細胞や組織を直接採取することが困難である.そのために卵巣腫瘍の場合には,治療前に病理組織学的検索が不可能である場合が多く,卵巣癌診断における腫瘍マーカーへの期待は大きい.特にコア蛋白関連腫瘍マーカーであるCA125は最も汎用されているマーカーの1つであるといえる.
しかしながら,血清マーカーの開発はやや一段落した感が否めない.さらには,がん特異性の観点からは限界も認識されてきている.
一方,近年のゲノム医学の急速な進展はさまざまながん特異的遺伝子変化を明らかにしつつある.一般に発がんの過程には,がん遺伝子,がん抑制遺伝子,ミスマッチ修復遺伝子などの変異が認められることが知られている.近年,婦人科領域においてもそれらの関与が指摘されており,これらのゲノム変化をがんの個性化診断のためのバイオマーカーとして用いる試みも行われている.
このような背景のもと,本稿では腫瘍マーカーの概念を血清マーカーのみではなく,遺伝子産物あるいはゲノム変化そのものにまで広げることで,腫瘍マーカーの今後の可能性について考えてみたい.
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