今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[消化器系疾患] 潰瘍性大腸炎
佐世 正勝
1
,
手島 みどり
2
,
神谷 晃
2
1山口大学医学部附属病院周産母子センター
2山口大学医学部附属病院薬剤部
pp.551-553
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100268
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1 診療の概要
潰瘍性大腸炎は,直腸から結腸の粘膜と粘膜下層が,びまん性に侵される慢性炎症性疾患である.直腸から連続的に病変の進展がみられ,大腸全般を侵す場合もある.原因は不明で,免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている.通常,粘血便,下痢や腹痛などの症状を示し,寛解,再燃を繰り返す.全大腸炎型で,10年以上の長期にわたり炎症を繰り返す例では大腸癌の危険がある.
潰瘍性大腸炎の発症時年齢のピークは20~30歳台(男性では20~24歳,女性は25~29歳)であるが,10~70歳台まで幅広く発症する.わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は77,073人(平成14年度特定疾患医療受給者証交付件数より)と報告されており,毎年おおよそ5,000人増加している.有病率(人口10万人当たり : 2002年)は61.2で,男女比は1 : 1である.診断時の病型分類は,直腸型226例(29%),左側大腸炎型248例(31.9%),全大腸炎型295例(37.9%)となっており,欧米と比較すると全大腸炎型の割合が高い.また,重症度別の症例数の割合は,軽症46.4%,中等症35.5%,重症14.8%で,欧米はわが国より重症例の割合が多い(厚生省研究班 : 1992年集計).
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