今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
1.日常的な突発疾患の治療と注意点
[そのほか] 浮腫
武井 麟太郎
1
,
竹内 正人
1
,
進 純郎
1
1葛飾赤十字産院産婦人科
pp.482-483
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100244
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1 診療の概要
浮腫は妊婦に多くみられる症状の1つであり,浮腫の客観的診断は皮膚の圧痕および数日以内の急速な体重増加の確認によって行われる.妊婦における浮腫の原因としては,妊娠による病的意義のない生理的浮腫,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に随伴する浮腫,そのほかの病的浮腫(腎疾患,心疾患,肝疾患,深部静脈血栓症など)に分類される.浮腫の治療方針はその原因によって異なるため,まずは原因を診断することが先決である.
2 治療方針
浮腫は以前,妊娠中毒症の診断基準に含まれていたが,2004年,日本産科婦人科学会は妊娠中毒症の名称を妊娠高血圧症候群に改め,新しい定義・分類においては浮腫の除外を提案した.これによって定義・分類の改定がされれば,浮腫単独では妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは診断されなくなる.日本産科婦人科学会会誌の解説1)によれば,浮腫のみを発症した妊婦の母児の予後は正常妊婦と同等であり,低出生体重児の頻度周産期死亡率も正常妊婦よりわずかであるが低いとしている.したがって,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)およびそのほかの浮腫をきたす疾患の合併が認められない場合は,妊娠による病的意義のない生理的浮腫と診断し,治療の必要性はないと考える.生理的浮腫の成因は,妊娠による循環血漿量の増加,増大した子宮による下大静脈の圧迫による静脈還流の低下,静脈の拡大,膠質浸透圧の低下などである2).
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