今月の臨床 安全な腹腔鏡下手術をめざして
腹腔鏡下手術合併症の予防と対策
皮下気腫,皮下出血
柴田 哲生
1
1昭和大学医学部産婦人科
pp.319-323
発行日 2005年3月10日
Published Date 2005/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100199
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はじめに
低侵襲手術を求める患者の声と医療機器の発達に伴い,腹腔鏡下手術は産婦人科領域においても急速な広がりをみせ,卵巣嚢腫や子宮筋腫をはじめとする大部分の良性婦人科疾患の手術に適応が拡大している.さらに積極的に腹腔鏡下手術に取り組んでいる施設では,悪性腫瘍に対するリンパ節郭清術なども行われるようになってきた.その一方で,手術に伴う合併症により深刻な事態に陥る症例が報告され,新聞やテレビなどマスコミにも大々的に取り上げられたこともあり,腹腔鏡下手術の安全性を求める社会的な要求が高まっている.われわれ医療従事者は,この要求に応えるべく合併症の予防に大いに関心を持ち,積極的に取り組まなければならない.
合併症予防の第一歩として,起こりうる合併症に対する理解を深めることが大切と考える.
皮下気腫や皮下出血は腹腔鏡手術の合併症としては比較的頻度が高く,しばしば認められるものの1つである.伊熊らによる94,000例のアンケート調査1)では,全合併症751例中,皮下気腫が最多の59%を占めている.ついで血管損傷が20%,創部出血(皮下出血はここに含まれる)が12%であった.ほとんどの場合はマイナートラブル程度であまり問題とならないことが多いが,ときに広範囲に及び患者のQOLに支障をきたすことがあり注意が必要である.
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