今月の臨床 症例から学ぶ常位胎盤早期剥離
早剥管理の新しい視点
最近の原因分析―血液凝固異常
廣瀬 雅哉
1
1大津赤十字病院産婦人科,滋賀医科大学産科学婦人科学教室
pp.167-171
発行日 2005年2月10日
Published Date 2005/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100172
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はじめに
常位胎盤早期剥離は,全分娩のおよそ0.5%という比較的高い頻度で発生し,多くは予測困難で突発的に発症し,母児に重大な事態をもたらすことがある産科疾患であり,古くより,そして今なお妊産婦および産科医に脅威を与え続けている1).妊娠中毒症や切迫早産で入院している妊婦が突然,常位胎盤早期剥離を発症し,重大なトラブルに発展することがいまだにあるし,ましてや定期的な妊婦健診が行われていても次回の健診までに,常位胎盤早期剥離により母体,胎児あるいはその両方に危機的状態が生じることを予測する手段は今なお皆無に等しく,ほとんど予測不能といえる.現時点では,常位胎盤早期剥離の原因と考えられる状態にある妊婦をハイリスクとみなして超音波診断などを駆使して厳重管理するよりほかはない.
近年,ある種の血液凝固線溶系の異常と常位胎盤早期剥離との関係が注目され,常位胎盤早期剥離の病因の1つとして認識されつつある.しかし,その概念が新しいがゆえに,病因としての位置づけ,重要性,診断法,治療法あるいは予防法など不明の点が非常に多い.本稿では,血液凝固線溶系の異常と常位胎盤早期剥離との関係,および今後の実地臨床における位置づけ,その活用法などについて,われわれのデータと,現時点で知りうる情報を紹介しながら述べることにする.
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