今月の臨床 症例から学ぶ常位胎盤早期剥離
症例から学ぶ
常位胎盤早期剥離による子宮内胎児死亡を反復後,フィブリノーゲン製剤の補充療法により生児を得た異常フィブリノーゲン血症合併妊娠の1例
武内 享介
1
,
山中 良彦
1
,
丸尾 猛
1
1神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座女性医学分野
pp.158-161
発行日 2005年2月10日
Published Date 2005/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100170
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はじめに
血液凝固機構の最終段階に関与するフィブリノーゲンは,肝臓で産生される分子量約340,000の糖蛋白で,その血中濃度は200~400 mg/dl,生体内半減期は3~4日である.フィブリノーゲンはトロンビンの作用により血漿中のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリンモノマーとなり析出し,活性型第XIII因子の触媒によって安定化フィブリンとなる.さらに,フィブリノーゲンは血小板の糖蛋白を介する凝集反応に関与するほか,接着因子として創傷の治癒機転に関与し,感染,外傷,手術などの外的侵襲時にも増加する.また,フィブリノーゲンは妊娠の成立・維持の必須因子であり,その異常の程度により妊娠初期流産から妊娠中期の常位胎盤早期剥離まで種々の病態が存在する.
われわれは,妊娠中期に常位胎盤早期剥離による子宮内胎児死亡を反復後,異常フィブリノーゲン血症と診断された症例を経験した1).本症例に対して,次回妊娠時に妊娠初期よりフィブリノーゲンの補充療法を行うことにより,常位胎盤早期剥離の発生を回避し妊娠の継続が可能であった.本稿では症例を呈示するとともに,妊娠維持におけるフィブリノーゲンの意義および異常フィブリノーゲン血症合併妊婦における周産期管理について述べる.
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