- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 はじめに
子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia : CIN)の若年罹患者の増加により,妊孕性を温存する治療法の必要性が高まっている.CINの子宮温存療法は,(1)子宮頸部円錐切除[コールドメスやレーザー,超音波による円錐切除,LEEP]と,(2)非切除治療[低周波電流,超音波,レーザーによる凝固や蒸散,光線力学療法(PDT)]に分けられる.頸部円錐切除は頸部の短縮,子宮口の閉鎖により月経困難,不妊,破水や早産などが問題になり,若年例についてはその適応について十分検討する必要があるが,根治性や確実な病理標本の提供という観点から蒸散法などの非切除治療を安易に選択すべきではなく,病巣の範囲が小さく浸潤癌が否定的な症例に限定すべきと考えられる.現在の頸部円錐切除術はレーザーによる円錐切除術やloop electrosurgical excision procedure(LEEP)が主流である.これらの治療とコールドナイフを用いた円錐切除術との大きな違いは,(1)術後出血の低減,(2)切断面および周囲に対する蒸散・凝固療法を追加し,子宮腟部粘膜の剥離はしない,(3)Strumdorf縫合をせず,切除面を開放するといった点にある.LEEPは円切や凝固法の利点を取り入れた方法で,切除時間も短く,出血も少量で,術後合併症もきわめて少ない方法である.切除面の損傷が小さく断端病巣の判定がより確実で,創部が閉鎖せず残存病巣を埋め込まないなどの長所がある反面,内頸部病変のある症例には適さないといった問題もある.検査所見をしっかり把握したうえでそれぞれの利点を生かした治療法を行うべきと思われるが,当科ではCINの子宮温存治療としてNd─YAGレーザーによる円錐切除術を採用しており,LEEP症例は少ない.レーザー法が頸部の大小や形状態,切除範囲の広さなどに対する操作の自由度において優り,工夫によりLEEPの長所を補い得ると考えているからである.また,病理組織学的検討を重視するため,蒸散法は特殊な場合を除き行っていない.LEEPは外来治療可能な方法として多施設で行われているが,レーザーによる円錐切除術も麻酔法や止血を考慮すればday surgeryは可能で,広義の外来治療と考えられる.本稿では,当科で行っているNd─YAGレーザーによる円錐切除術や術前検査などについて述べる.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.