今月の臨床 子宮内膜症の新しい治療戦略
不妊症の治療
内膜症のART
藤井 俊策
1
,
木村 秀崇
1
1弘前大学医学部産科婦人科学教室
pp.195-199
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100035
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内膜症はARTの治療成績を低下させるか?
内膜症で起り得る骨盤内の器質的異常,すなわち卵のpick upや胚・配偶子の輸送を妨げる癒着などはARTで克服できる.現に多くの内膜症性不妊女性がARTにより児を得ている.しかし,ARTを繰り返し行っても妊娠が成立しない内膜症性不妊もしばしば経験する.その多くが重症例で,卵巣刺激を行っても採卵数が少なく,不良胚しか得られない.
Barnhartら1)は,内膜症性不妊と卵管性不妊とでARTの転帰を比較した報告のうち,妊娠率が記載された22文献についてmeta─analysisを行い,内膜症性不妊では妊娠率のみならず採卵数,受精率,着床率のすべてが低下すると結論した.また,重症例では軽症例と比較してこれら評価項目すべてが低かった.重症男性不妊のためICSIを施行した症例を対象とした検討2)でも,内膜症では採卵数が少なかったと報告されている.海外におけるdonor卵を用いたARTの成績は,内膜症性不妊の問題点を明瞭にする.Recipientの内膜症は妊娠率に影響しない3~5)が,卵のdonorに内膜症があるとrecipientの妊娠率と着床率が低下する6).さらに,内膜症女性の卵を用いたARTでは,donorとrecipientのいずれにおいても妊娠率が低下する7).さらに,先のメタ分析には含まれなかった報告でも,内膜症性不妊での治療成績の低下が示されている8, 9).したがって,内膜症性不妊では卵の質・量とも低下し,ARTでも克服できない不利な問題を抱えていると考えざるを得ない.
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