今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 D生殖補助医療(ART)
【黄体補充】
81.ART周期の黄体補充に関して,近年,子宮内膜症に適応となったディナゲスト®を応用できる可能性はありますか.詳しく教えてください.
原田 省
1
1鳥取大学医学部生殖機能医学
pp.585
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102070
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ディナゲスト®(ジエノゲスト)は,子宮内膜症治療薬として開発された新しい経口プロゲスチン製剤である.プロゲスチン療法は40年以上の歴史をもつ子宮内膜症の治療法であるが,本邦では有用な薬剤が市販されていなかったため,一般的な治療法とならなかった.ジエノゲストは,旧東ドイツのイエナファーマ社で開発された19─ノルテストステロンの誘導体である.17α位にシアノメチル基,9位と10位の炭素の間に二重結合が導入され,経口投与により強いプロゲステロン作用を有し,アンドロゲン作用や肝機能障害が少ない.ステロイドホルモン作用を,転写活性促進作用を指標としてみると,プロゲステロン受容体のみを活性化し,グルココルチコイド,ミネラルコルチコイド,エストロゲン受容体には反応せず,抗アンドロゲン作用を有することが示されている.したがって,プロゲステロン以外のホルモン作用がないことから副作用も少ない.
子宮内膜症患者に2mg/日で24週間投与されると,内膜症病変の縮小や消失が観察され,同時に月経痛や骨盤痛が軽減されることが示されている1).本邦での臨床試験成績でも,子宮内膜症の月経痛や子宮可動性の制限などの自他覚所見が対照薬であるスプレキュア®と同等に改善することが示された2).
ジエノゲストを14日間反復経口投与して子宮内膜の分泌期様変化を検討すると,0.45mg/日の投与で完全な分泌期様変化が誘導され,このときの総投与量から比較すると,ノルエチステロンや酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)に比して約10~20倍の活性を有する.したがって,経口投与で子宮内膜に対する作用がきわめて強いことがわかる.
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