今月の臨床 子宮内膜症の新しい治療戦略
がん化への対応
がん化の診断(マーカー,画像診断)
藤吉 啓造
1
,
嘉村 敏治
1
1久留米大学医学部産科婦人科学教室
pp.129-131
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100022
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はじめに
上皮性卵巣癌における子宮内膜症の合併頻度は漿液性腺癌で4.5%,粘液性腺癌1.4%,明細胞腺癌35.9%,類内膜腺癌19.0%であり,子宮内膜症の2.5%にがん化の可能性が推測されている1).また,分子生物学的検索により子宮内膜症と卵巣癌の間に関連性が見いだされようとしている.諸家の報告例より,子宮内膜症がん化の特徴として,明細胞腺癌と類内膜癌の発生頻度が高いこと,臨床進行期が一般的な卵巣癌より早いため,予後が比較的良好であることなどが挙げられた1).本邦においても卵巣チョコレート嚢胞患者6,398例と卵巣チョコレート嚢胞を有しない57,166例を対象として長期にわたる大規模な前方視的疫学調査が行われ,卵巣チョコレート嚢胞患者からは46例に卵巣癌が発生したのに対し,卵巣チョコレート嚢胞を有しない症例からは7例の卵巣癌が発生し,その発生率はおのおの0.72%,0.012%で,卵巣チョコレート嚢胞患者の卵巣癌を発症する相対危険率は12.4%であることが報告された2).
子宮内膜症は若年に好発し,合併する卵巣チョコレート嚢胞は診断が確定した場合には妊孕能の温存を目的として保存的に取り扱われる場合も多い.しかし,経過中にがん化という問題を秘めており慎重な対応が必要となる.以下に,卵巣チョコレート嚢胞と卵巣癌および卵巣チョコレート嚢胞のがん化の診断について述べる.
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