今月の臨床 ART 2006
ART成功率向上のための要点
精子の調整・媒精
栁田 薫
1,2
,
藤倉 洋子
1,3
1国際医療福祉病院リプロダクションセンター
2国際医療福祉大学臨床医学研究センター
3認定生殖補助医療胚培養士
pp.53-57
発行日 2006年1月10日
Published Date 2006/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100010
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よい精子とは
よい精子とは十分な受精能と完全な父親の遺伝情報を備えた精子であり,そのような精子をより多く回収することが要点となる.精子選別法として,現時点では運動性が良好な精子を選別回収する方法が採択されている.
基礎知識
DNAダメージと核タンパク
精子のDNAには核DNAとミトコンドリアDNAがあり,1998年ころからそれらのDNAのダメージ(断片化)の有無と受精能,胚発生能との関連が報告されている1).最近では精子DNAダメージと精子核タンパク(プロタミン)異常との関連が注目されている2, 3).射出精子の核タンパクはプロタミンで,体細胞の核タンパクであるヒストンと異なり,DNAの結合を固く補強する役割を持つ.よって,プロタミンの異常はDNAの結合を脆弱化する可能性があり,ダメージに直結する.精子DNAダメージへの精子処理の影響については,精子の培養時間が長いほど,また遠心処理が多いほどダメージが強くなる4).精液処理については無処理が最もダメージが軽微で,遠心洗浄,無洗浄のswim─up法,洗浄精子のswim─up法の順にダメージが強くなる4).密度勾配遠心法はswim─up法よりDNAダメージが少ないといわれる5).精子DNAのダメージが多いケースではIVFやICSIでの胚発生,特に胚盤胞への発生率が低下する3, 5).しかし,現時点では精子DNAダメージは妊娠率に影響しないと報告されている6).
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