症例検討会 骨・軟部腫瘍13例
〔症例7〕尿崩症を呈した多発性骨ならびに肺病変
自見 厚郎
1
,
堀江 昭夫
1
,
肱岡 昭彦
2
,
中島 清隆
2
,
小林 靖幸
2
,
鈴木 勝己
2
,
朝倉 昭雄
3
1産業医科大学第1病理
2産業医科大学整形外科
3産業医科大学小児科
pp.256-259
発行日 1984年3月25日
Published Date 1984/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906917
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症例は14歳の女性.主訴は両肩痛,腰痛と多飲多尿.家族歴,既往歴に特記すべきことはない.昭和56年(12歳)頃より,運動時の疲労が増強し,体育ができなくなった.昭和57年4月頃より右肩に疼痛が出現し,次第に右腕の挙上が困難となった.同様の症状が左肩にも出現し,同年12月に腰痛も生じたため近医を受診した.X線写真で右肩関節に異常所見を指摘され産業医大整形外科に紹介された.また同年9月頃より多飲多尿(4-5l/日)傾向も出現してきた.臨床所見として,尿崩症,僧帽弁狭窄閉鎖不全症,両肩の運動制限および腰痛が認められた.低比重尿(1.005),プロラクチン値の著明な上昇,その他の下垂体ホルモン値の低下がみられた.水制限試験陽性であったが,トルコ鞍のballooningはみられなかった.右上腕骨近位の骨幹端に骨融解性変化がみられ骨端にも拡がり,病巣の境界は不鮮明で骨膜反応も著明でなかった(図7-1).同様の骨融解巣が両側対称性に,橈骨,大腿骨,脛骨に,また腸骨,椎骨にも認められ,Gaシンチでも異常集積像として描出された.胸写で両肺野にた結節散布性陰影がみられた.以上の所見から,histiocytosis Xが疑われ,右上腕骨と右腸骨の生検が行われた.組織学的に好酸性肉芽腫の像はなく,比較的多い核分裂像を示す線維芽細胞の増殖と膠原線維の増加があり,間質の硝子化が目立った(図7-2).明るい胞体をもつ組織球は確認されなかった.
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