視座
"宇宙の意志"と医療従事者の役割
大塚 哲也
1
1玉造厚生年金病院
pp.1127
発行日 1983年11月25日
Published Date 1983/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906846
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今年の3月18日に思いもかけず前立腺肥大症で入院の上,手術をうけた.私自身特に前立腺肥大症になりたいと思ったわけではなく,全く"私の意志"に反する出来事であった.即ち人には"自分の思い通りになる意志"とそうでない"宇宙の意志"(人は神とも仏とも言うが)とがあり,又"宇宙の意志"の方が上位にある事が分る.臨床的に我々医療関係者が全力を尽くしても命を救う事もできない例があるかと思えば,重大事故にあい,現場に長くそのまま放置されていたにも拘らず助かった例もある.とすると我々医療関係者が患者さんを治すものでないことが分る.もしその人達に"宇宙の意志"による寿命があるならば,我々としては身体的,精神的,経済的,社会的にその人のもつ最大の能力まで,できる限り早く,充分に回復させるというリハビリテーション医学の定義をそのまま実行に移すに過ぎないということになる.人は"精神的エネルギー"libidoと"身体的エネルギー"をもち,これがお互いにバランスを保ちながら,その人全体としてのエネルギーとなっている.従って一方のエネルギーが抑圧されると,他方のエネルギーに転換される.患者或は障害者の人達も外観は一見変らぬように見えても,精神面・心理面では刻一刻と変化している."心身症"の名に示すように心に色々とわだかまりがあると身体面に症状が現われ,又この反対の場合もあることも知られている.従って我々はこの人達の精神面・心理面についても充分満足させておかねば,いわゆる"はしご医者"の原因を作り,各病院を自分自身の納得いく所まで転々と渡り歩く結果を生むことになる.
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