視座
ロボットと熟練工
室田 景久
1
1東京慈恵会医科大学整形外科
pp.965
発行日 1982年10月25日
Published Date 1982/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906617
- 有料閲覧
- 文献概要
最近,科学技術の目覚しい進歩によって産業界では種々の変革が起こりつつある.工場にロボットが導入され,長年勤続の熟練工の職がおびやかされているなどの事もその一つであろう.
我々の整形外科の世界においても同様の事がみられはしないであろうか.手術器械の進歩により,最近の整形外科の手術は高度かつ多岐にわたるようになり,さらに一昔前では,経験深い,手術に熟達した整形外科医が冷汗三斗の思いでやっと成し遂げたであろう手術も,最近ではその手術のために特に開発された器械の使用法さえマスターしていれば,さして経験のない者でも危な気なく行うことができるようになっている.この事自体は非常に喜ばしいのであるが,問題はこのような便利な器械のうえにあぐらをかき,自分の手術の技倆が超一流の域に在ると錯覚し,手間ひまかかる整形外科医としての基礎的習練を軽視する,心ないロボット的な若い医師が輩出し始めたという点にある.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.