論述
減圧症における脊髄病変—3剖検例を基に減圧症における脊髄病変の病理発生についての考察
北野 元生
1
,
林 晧
2
,
川嶌 真人
2,3
,
浦郷 篤史
4
,
船越 啓右
4
Motoo KITANO
1
1九州労災病院病理検査科
2九州労災病院高圧医療研究部
3九州労災病院整形外科
4九州歯科大学病理学教室
pp.1130-1139
発行日 1977年12月25日
Published Date 1977/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905628
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緒言
減圧症の発生に関しては,ある一定気圧環境下に滞在した生体がそれより低い気圧環境下へ急速に移動した際に,血液あるいは組織中に溶解しているガスが気泡化することに原因が求められる1).減圧症の症状は症例によつて一様ではなく,種々の型に分類されているが(林,1974)22),脊髄の完全または不完全麻痺をきたす例が高率を占めており,その予防や治療,病因追求に大きな努力が払われている.
減圧症における脊髄の器質的変化としては白質にみられる出血または水腫を伴つた広汎な壊死性病変であることはLeyden, E(1878)17),和気(1929)26),Blick, G(1909)4),Haymakerら(1955)13)によつて既に明らかにされている.脊髄病変の病理発生については,Bert, P(1878)1)の気泡発生説以来,血管内気泡塞栓症として理解されており,数多くの教科書にも取り上げられてきたが,現在では,組織あるいは血液中の気泡発生に付随した様々の現象が明らかにされており,単純な血管内気泡塞栓説をいうものはいない.減圧によつて発生した気泡による血液凝固系の変化や血管の攣縮作用ないしは血管壁の障害などについて,近年多くの知見が得られており,脊髄病変の病理発生についても,これらの面からの考察を加えることがきわめて重要であると思われる.
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