臨床経験
左第10肋軟骨に発生したRib-Tip Syndromeと思われる1例
望月 一男
1
,
河路 渡
1
,
加藤 正
1
,
向後 博
1
,
布田 由之
1
,
太田 信夫
1
,
河口 幸博
2
,
草野 佐
3
Kazuo MOCHIZUKI
1
1杏林大学医学部整形外科学教室
2杏林大学医学部病理学教室
3社会保険山梨病院外科
pp.1119-1123
発行日 1977年11月25日
Published Date 1977/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905625
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肋骨弓部に局在する激痛を主徴とする,いわゆるRib-Tip Syndromeは,その疼痛が激烈かつ特徴的であるが,その治療が比較的容易であることと,比較的ありふれた症状の故に,広く一般に認識されていない.本症候群は1919年E. F. Cyriaxが初めて別個の疾患として記載し1),1922年R. Davies-CollcyがSlipping Ribと命名し2例報告して以来2),種々の呼称で呼ばれつつ1個の症候群として鑑別されようとしている.文献的に本症候群を概観すると,その疼痛は肋軟骨のanterior endのhypermobilityに伴つて発生し,多くは第10肋軟骨に発症するが,ときに第8,第9肋軟骨にも発症する.肋軟骨が直接胸骨に付着する第1肋軟骨より第7肋軟骨には発症せず,肋軟骨が相互に付着しているか,looseな線維性組織によつて付着している第8,第9,第10肋軟骨に発症する.この解剖学的特異性は,第8,第9,第10肋軟骨にhypermobilityを招来し易く,外傷との関連性が大いに問題となるところである.また,本症候群は上位肋軟骨のcostochondral junctionsやchondrosternal junctionsを冒すことはない1,3)(第1表).
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