臨床経験
小児肘顆上骨折の治療
渡辺 健児
1
,
加賀 完一
1
,
米延 策雄
1
Kenji WATANABE
1
1大阪厚生年金病院整形外科
pp.903-908
発行日 1977年9月25日
Published Date 1977/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905593
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小児の骨折は,仮骨形成が迅速確実で骨癒合が容易に起こり,成長過程での旺盛な修復力によつて,ある程度までの短縮や,周転以外の変形に対するかなりの自家矯正が期待されるので手術の適応はきわめて少ない.しかし関節骨折の場合は,1)できるだけ解剖学的形態に近く整復して関節不適合を除く.2)関節支持組織の損傷を十分修復する.3)早期運動が可能なよう確実に固定する等が治療の焦点であり,予後を大きく左右するので,新鮮例で関節内に及ぶ骨折は転位の状態如何によつてはきわめて高い手術の適応があることに異論は少ないと思うが,関節周辺の骨折となると初期治療法の選択に幾つかの問題が生じてくる.一方,陳旧例の場合,関節およびその周辺の骨折では手術による関節面の再適合がなかなか思うようにまかせず,関節や軟部組織に加わる侵襲が予後に不利な影響を与える結果となることも稀ではないので,観血的に処置するとしても,関節面の転位は温存したまま,周転や変形の矯正を主とした範囲に留めるほうが反つて好結果を得る場合が少なからず経験され,手術適応の問題はさらに複雑になる.
小児肘関節は,骨頭核の出現時期や骨端軟骨の形態が複雑なために骨折像を正確に把握することが難しく,治療の適応を誤り時期を失して不慮の結果を招く場合も決して少なくないので,初期に適確な診断を下して迅速に治療方針を決定することが大切である.
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