手術手技
人工関節手術の術後感染予防策について—特に抗生物質混入骨セメントならびに層流式無菌手術室に関して
木下 勇
1
,
岡崎 亀義
2
Isamu KINOSHITA
1
,
Kameyoshi OKAZAKI
2
1徳島大学医学部整形外科学教室
2徳島大学医学部付属病院中央手術部
pp.1100-1111
発行日 1976年12月25日
Published Date 1976/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905443
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はじめに
高度に荒廃した関節の機能再建法として,最近人工関節による置換手術が広く行われるようになつてきた(第1図).我が国でもここ数年来本手術は頓に普及してきたが,この種手術では人工関節の耐用年数,術後人工関節のゆるみ(loosening)と並んで術後感染の問題が常に重大合併症として云々されている.特に大型異物を永久的に体内に遺残するため,術後感染の予防には万全の措置を講ずる必要がある.一度感染を惹起するならば手術本来の目的が失われるのみならず,極めて難治性の深部感染を招来する.欧米における多数例での発生率は1%〜10数%と報告され,大部分は人工関節の抜去を余儀なくされている.これは患者ならびに医療担当者にとつて誠に不幸なことであり,確実な術後感染予防策の樹立は本手術に関係する全ての医療担当者の重大な関心事でもある.
筆者は1971年以来当教室ならびに関連病院において股関節を主としてprosthesisによる関節置換手術を行つてきたが(第1表),当初から術後感染には多大の注意を払つてきた.
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