論述
Triple osteotomyの適応について—年長児遺残性亜脱臼の治療
石井 良章
1
,
泉田 重雄
1
,
家田 浩夫
1
,
中西 忠行
1
Yoshiaki ISHII
1
1慶応義塾大学医学部整形外科学教室
pp.832-841
発行日 1977年9月25日
Published Date 1977/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905583
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はじめに
先天股脱の治療が新生児期から開始されるようになつたものの,日常整形外科臨床で年長児の遺残性亜脱臼を治療する機会は今日なお少なくない.これらの症例に対して現在われわれは残念ながら将来の変形性股関節症を確実に予防し得る方法を見出すことができない.今日行なわれているのは,保存的治療法で経過を観察するか,観血的治療法で積極的に求心性の改善や新臼蓋の形成,臀筋バランスの改善を試みるかのいずれかである.すなわち年長児という生体の適応力が十分期待できる最終年齢期でありながら,これを活用した説得力のある治療法に欠けたまま今日に至つている.
1973年Steelの報告したtriple osteotomyは,この点年長児の遺残性亜脱臼を解決する上で,きわめて画期的な手段をわれわれに提示したといえる.彼は7歳から17歳までの先天股脱や麻痺性脱臼を対象として行なつたが,1974年以来われわれは年長児の遺残性亜脱臼を中心に,本法をすでに20数例に施行し,見るべき成果をあげつつある.今日まで本邦において,年長児の遺残性亜脱臼の解決を目的として本法を適用した報告はない.われわれは術後1年以上経過した年長児の本法施行例を紹介し,その適応と問題点について言及する.
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