論述
先天性内反足における下腿骨軸捻転について
野村 茂治
1
,
松尾 隆
1
,
緒方 公介
1
,
熊谷 洋幸
1
Shigeharu NOMURA
1
1九州大学医学部整形外科学教室
pp.725-737
発行日 1974年9月25日
Published Date 1974/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905043
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緒言
先天性内反足治療後にしばしば観察されるtoeing-in-gaitは患者の歩容を不良にし,その除去が困難で頑固であるという問題の他にその不自然な歩容のゆえに十分なる治療が行われたという感覚を減じ,内反足の難治性を強く印象づける点で大きな問題といえる.このtoeing-in-gaitの原因として①下腿骨(𦙾骨腓骨)の内捻,②前足部内転(特に距骨に対する舟状骨以遠),踵骨内反の残存,③距骨々頭の内転,④更には大腿全体の内旋といつたいくつかの問題が各先人より規定され,論議されてきたが問題の核心をとらえるという意味ではこれ等の多くの問題点をふるいにかけ,誤つてあるいはあいまいに問題点として上げられたものは除外し,真の原因をつかまえる努力が必要である.
当教室では従来よりこの難治性疾患に後方解離術を中心に積極的にとり組んできたが11,15),その長期的な追跡の結果,臨床的には少数ではあるが十分に変形が矯正された症例においてはtoeing-in-gaitが全く見られず,外見上下腿内捻もみられていない.このことよりtoeing-in-gaitは足軟部組織の不完全な処理によるもので,下腿内捻は存在しないのではないかとの疑問を持つに至つた.一方変形矯正の不十分な大多数の治療足においてはなお強いtoeing-in-gaitが認められ,しかも注意深く観察してもやはり外見上何らかの骨性の内捻があるかにみえる.
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