論述
頸椎部における損傷脊柱の再建について
大谷 清
1
Kiyoshi OHTANI
1
1国立療養所村山病院整形外科
pp.377-388
発行日 1974年5月25日
Published Date 1974/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904988
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はじめに
古いGuret(1862)の統計によれば,全骨折中で脊椎損傷のしめる割合は0.33%と稀有な損傷であると記載される.ところが,近年産業の発達と交通の複雑化,スピード化にともない,一般外傷と並んで脊椎損傷も逐年増加の趨勢にあることは諸家の統計が示すとおりである.重度の脱臼骨折からレ線上骨傷の明らかでない椎間板損傷,さらにはいわゆる鞭打ち損傷まで含めると患者数の激増はすさまじい.しかも,本損傷の発生には局地性がなく,全国至るところにみられるようになつてきたことも近来の大きな特徴といえる.
周知のとおり,脊椎損傷は胸腰移行部,下位頸椎に頻発する.国立村山療養所の統計によると全脊椎損傷の53.1%が胸腰移行部,次が下位頸椎の29.5%である.脊椎は脊髄を容れている.したがつて,脊椎損傷は脊髄損傷を合併することが少なくない.なかんずく,下位頸椎は脊髄周囲のゆとりが少なく,下位頸椎損傷は頸髄損傷を合併することが多い.
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