視座
関節生物学の進歩
伊藤 鉄夫
1
1京都大学医学部整形外科学教室
pp.981
発行日 1973年12月25日
Published Date 1973/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904917
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近年,関節のbiologyの研究が基礎医学や工学の方面から強力に進められている.摩擦の研究の歴史は工学の分野では非常に古く,ルネッサンスに始るが,生物の関節摩擦の研究の歴史は浅く,重要な研究の多くは1960年以降に発表されている.研究はようやく始つたばかりである.
関節軟骨・滑液膜・滑液からなる関節の潤滑機構については今までにhydrodynamic lubrication,boundary L.,weeping L.,elastohydrodynamic L.などについて論ぜられているが,最近またboosted lubrication説が提唱された,生物の関節運動においては,荷重面に薄い液層(10-4-10-3cm)が形成されて潤滑作用を行うのであるが,潤滑液としてはヒアルロン酸分子団と蛋白分子団の複合体が重要な役割を果している.ムコ多糖であるヒアルロン酸はThixotropyなる特性を有することで有名である.この物質は静置状態では多数の分子が結合して高い粘性を示すが,攪拌すると直ちに個個の分子に分散して,粘性が低下する.
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