手術手技
胸腰移行部椎体に対する前方侵襲法について
大谷 清
1
Kiyoshi OTANI
1
1国立村山療養所整形外科
pp.318-326
発行日 1971年4月25日
Published Date 1971/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904535
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はじめに
胸腰移行部は横隔膜を介して胸腔と腹腔にまたがり,全脊柱の中でも局所解剖学的に錨雑な部位である.一方,背柱の生理的彎曲の移行部であるのみならず,胸椎と腰椎の構築上および生理的機能上の移行部でもあり,当該部に荷せられた負荷は大である.それだけに胸腰移行部に惹起される疾患も稀有とはいえず,最近,頻発の一途をたどる椎体骨折や脱臼骨折を始めとして椎間板症,脊椎カリエスなどがそれてある.
しかし,これらの疾患に対して積極的手術療法が加えられるようになつたのも比較的最近で,その歴史は浅い.本邦では脊椎カリエス例に対する笠井ら(1954),松本ら(1957)の,外国では同じく脊椎カリエスに対してNissenら(1956),Hodgsonら(1956)の椎体侵襲の報告をもつて嚆矢とする.その後も脊椎外科の進歩はめざましく,Crafoordら(1958)は胸腰移行部椎間板ヘルニアに対して開胸前方進入の経験を発表している.Roaf(1958)は脊椎カリエスに刻して胸膜外進入椎体侵襲の経験を報じ,池田(1966)は胸腰移行部に対して横隔膜をはさんで胸膜外,腹膜外進入法を発表した.宮者も池田の方法に準じ,胸腰移行部椎体侵襲を経験した.以来現在まで,その自験例は50を越すにおよび,侵襲法にもいささか改善,改良を加え,今日におよんだ.
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