視座
新しい専門分科
天児 民和
1
1九州大学
pp.413
発行日 1969年6月25日
Published Date 1969/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904081
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昨日,九州リハビリテーション大学校の卒業式に列席した.24人の学生が卒業をし,全員,国家試験にも合格したので大変に嬉しそうで,特に女性は全部振袖姿で出席したので,大変華やかな式典であつた.しかしこの人達を眺めながら,今後この人達の歩む道が決して安楽なものではないことを思いつつ,私の40年になんなんとする整形外科医としての過去をふり返つた.
40年前に私が自分の終生の専門を整形外科に決めた時,私の周囲の人達は不安な気持で私を見つめていた.実際,整形外科医として踏み出してみると,専門分科としては未だ社会から認められてはいなかつた.大学でも講座がある所は僅かであるし,総合大学にも講座のない所が多かつた.まして大学以外の病院で整形外科を独立させている所はほとんどなかつた.そこでわれわれ若い整形外科医者はいつも不満をもつていたが,そんな時に神中先生は次のようにいわれた.「1つの臨床専門分科が社会に認められるには,その学問,技術が優れて他の分科のものが真似ができないという段階に達することが必要である.他の分科のものが多少の問題はあつてもこなして行ける間は,なかなか独立した分科として認めてくれない.そこでわれわれは整形外科の学問をより深くし,技術をより高度化して行かなければならない」.
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