視座
地方大学医学部の現状と問題
高岡 邦夫
1
1信州大学医学部整形外科
pp.595-596
発行日 1998年5月25日
Published Date 1998/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902433
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今年も例年のように大学入試と卒業,医師国家試験のシーズンを迎えている.多くの地方大学の整形外科の教室で,新入医局員の勧誘が行われていることと思う.大学病院の整形外科では教室の活性化や地域医療に必要な若い人材の確保は大切であるので当然のことだが,これがなかなか大変である.卒業生の大半が出身地(ほとんどが大都市)へ帰っていくからである.若者の都会志向,一極集中による地方軽視,偏差値による受験大学の選択のため止むを得ないとする意見もあるが,このまま放置すれば多くの地方大学の医学部は存続の危機にさらされることは明らかである.
一県一医大,私立医大の新設などの政策によって医者の数が急速に増加し,人口10万人あたりの医師数はほぼ200人と欧米先進国なみになったそうである.しかし当地,長野県ではその半分強である.他の地方でも同じ状態であると聞く.つまり,わが国では医師の地域的分布に大きな片寄りがあり,一県一医大の目指す効果が必ずしもでていないともいえる.その上,全国レベルでの医師過剰と医療費の抑制のために,近く医学部学生定員の削減や医学系大学の統廃合が予測されている.そうなれば,今のシステムでは,地方の医師不足はさらに進むものと思われる.
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