シンポジウム 腰椎変性すべり症の手術
緒言/「腰椎変性すべり症」治療の方向付け
富田 勝郎
1
1金沢大学医学部整形外科
pp.4-5
発行日 1996年1月25日
Published Date 1996/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901804
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このところ整形外科関連学会や研究会で「腰椎変性すべり症」がシンポジウムや主題に取り上げられることが多くなっている.その理由となる背景を考えてみると,ひとつには高齢化社会に伴って腰椎変性の最終段階としての変性すべり症の患者が増えてきていること,もうひとつにはそれに対する治療が迫られている脊椎外科医サイドにまだ充分納得行くような治療体制が整っていないことに基づいているように思える.特に後者の確立が急務な課題となってきているゆえであろう.
実際この疾患に対して,当面の症状のみを問題にすれば保存的治療でも充分な場合もあるし,逆にbiomechanicalに理に叶った手術を行おうとすれば勢い侵襲が大きくなってover treatmentだというそしりをも招き兼ねない.安全確実に腰痛・神経痛から解き放つのが目的であるとはいえ,同時に長期にわたって安定した治療効果をねらおうとすれば,いろいろな程度の病態があるこの疾患を一つの治療方針で貫こうとするのにはいささか無理があるように思われる.しかし最近のシンポジウムを聞いていると,少なくとも会場内では各自の意見が対立したままでなかなかお互いに譲らない激しい議論が交わされている.この熱気は会場の聴衆者としては楽しみのひとつでもあるが,その一方で路頭に放り出されたままの「迷える子羊」になったような気分にもなる.
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