特集 痛みをとらえる(第21回日本脊椎外科学会より)
「痛みをとらえる」
小野 啓郎
1,2
1第21回日本脊椎外科学会
2大阪大学整形外科
pp.340-341
発行日 1993年4月25日
Published Date 1993/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901081
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医学の歴史は「痛みをとらえる」ことに悪戦苦闘した人間の記録といえないこともない.骨折による痛みはエジプトのImhotepが記録し治療している上5000年前でもわかりやすかったのだろう.頭痛を穿頭術でやわらげようとしたインカの土偶は脳外科手術のはしりを意味するものか.神経痛に対する鍼・灸療法は中国5000年の叡智と無縁ではなかろう.今日,痛みの診断・治療技術は格段に進歩した.単純X線診断かミエログラフィーしかなかった時代に比べてCTやMRIは,一層雄弁に,痛みの局在を教えてくれる.痛みの伝達物資や病態マーカーあるいは生体由来の鎮痛物資なども発見されたから,痛みの本態を解明する研究は核心に迫りつつあるといえよう.その一方で,実地医家の痛みのとらえ方は旧態依然の観がある.問診・理学所見・神経学的診断および臨床検査.鎮痛剤・神経ブロック・理学療法等々である.果たして見逃しや見込み違いがどの程度なのか? 正確なところは分からない.病名・診断法がほとんど西欧の医学教科書の域を越えないことも気になりはしまいか? ものの見方や考え方にもっと日本独自のものがあってもよいのではあるまいか? とりわけ脊椎由来の疼痛に関しては.これが第21回日本脊椎外科学会の主テーマに「脊椎とその周辺からの痛み」を選んだ動機である.このテーマに関連した演題が104題にのぼり,一般演題の140題に迫るものがあった.
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