緒言

　整形外科のsurgical site infection(SSI)予防は絶えず新たな研究が行われています．今号では，さまざまなSSI対策の中でも特に重要なテーマに絞り，「MRSA感染症の診療ガイドライン2024」の改訂内容も参考に，現時点のエビデンスをわかりやすくおまとめいただきました．また，SSI治療はさらに難しいテーマです．病態が非常に複雑で，質の高い研究は限られています．しかし，SSIの治療は待ったなしです．常に，その現時点で考えられる最善の治療を行わなければなりません．今回は，特に遭遇頻度の高い人工関節，骨折と脊椎の3つの分野における代表的な治療戦略の要点を，若手の整形外科医の先生方に是非理解しておいてもらいたい内容を中心に概説いただきました．エキスパートの先生方の英知を結集し，大変すばらしい内容になったのではないかと思います．

　また，特集冒頭には私のメンターであり，心より敬愛するJavad Parvizi先生からeditorialをお寄せいただきました．特集企画のご依頼をいただいた際に真っ先にご寄稿の相談をし，ふたこと返事でご快諾いただきました．そのときの感動を，昨日のことのように覚えています．ちょうど2024年夏に開催したWorld Expert Meeting in Arthroplastyを終え，これから2025年のInternational Consensus Meetingの準備に本格的に取り掛かろうという超ご多忙な時期に，このような示唆に富むご寄稿をいただき感謝の念に堪えません．今回は，彼が今一番注目している分野で，最近最もinspireされた論文のご紹介とのことです．まだ国内では十分に議論されていないテーマですが，本研究から得られるさまざまな気づきは，きっと今後のSSI対策のブレークスルーにつながるのではないか思います．あまたの苦難を乗り越え，誰よりも努力し，種々の難題に対して常に真正面からopen mindで挑み続けるParvizi先生のphilosophyを少しでも感じ取っていただければと思います．