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21世紀の技術革新の流れの中で,人工知能(artificial intelligence:AI),仮想現実(virtual reality:VR),ロボット工学が医療の領域でも融合すると考えていました.これらの技術が,当初の想定を超越するような洗練されたツールとなりつつあることに驚きます.AIはエキスパート・システムの延長として,膨大な知識の貯蔵庫だと考えていました.しかし,大規模言語モデル(large language models:LLM)の例を挙げるまでもなく,機械学習とディープ・ラーニングの進化によって,AIは実現不可能と考えられていた領域へと突き進み,さらに汎用人工知能(artificial general intelligence:AGI)へと発展しています.同様に,VRの軌跡は拡張現実(augmented reality:AR)から複合現実(mixed reality:MR)へと変化し,現実世界と仮想世界の境界を融合させました.人の手の代替としてのロボットの力は,20世紀に既に証明されています.
AI,VR,ロボット工学の融合は必然であり,今後10年ほどで医療やヘルスケアに驚異的な変革をもたらすことになるでしょう.人工関節手術においては,術前計画から実際の手術まで,AIとロボットの融合による治療は既に外科医の知的能力と手術テクニックをはるかに凌駕してしまいました.対象物を固定できれば,ロボット手術の正確性は揺るぎないものです.この流れは,脊椎外科手術にも及び,人工関節手術と同様にロボット手術が主流になるのは明らかです.また,全世界の電子カルテ情報が統合されれば,蓄積されたリアルワールドのエビデンスに基づいた治療法をAIから指示されるようになり,診療ガイドラインなどは陳腐な遺物になってしまうかもしれません.
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