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透析患者さんの緊急輸血時に,血液凝固に時間が掛かるので血漿で交差適合試験を行っています.透析患者さんに限らず交差適合試験を血清ではなく,血漿で行うようにしたいと考えているのですがこのときの問題点と注意すべきことを教えてください.(高岡市 M.T.生)
はじめに
透析中の患者からの検査用検体は,通常より凝固しにくく,完全に凝固するまでにはかなり長い時間を要することが多い.また,血栓予防の薬剤を服用している患者,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,DIC)や敗血症のために凝固系が正常に機能していない場合にも同様の状況に遭遇することがある.このような場合,採血後の検体にトロンビンなど凝固を促進する薬剤を加え,検体を完全に凝固させたのち血清検体を使用するか,あるいは抗凝固剤を加えて採血を行い,血漿検体を用いて検査を行うかを選択することとなる.
一般的に,輸血検査のうち交差適合試験および不規則抗体検査においては,従来から,補体結合性抗体の検出に重きを置くとの観点から血清検体を用いることが原則とされてきた.しかし,近年,輸血検査においても,多くの検体を効率よく処理する必要性や日常的に輸血検査を行っていない担当者が検査を行う場合(時間外検査など)の迅速かつ正確な検査を目的として,ゲル法やカラム法を原理とする輸血検査用自動機器の導入が進んでいる.検査を自動機器で行う場合,使用する検体には血漿検体が必要となる.
ちなみに,われわれの施設では自動機器を使って行うABO,Rh0(D)血液型および抗体スクリーニング検査用検体と,用手法で行う交差適合試験に用いる検体のうち,緊急時あるいは追加申し込み時に,手術室から直接提出される検体には抗凝固剤入りの血漿検体を,用手法で行う緊急時以外の交差適合試験には凝固した血清検体をと検査項目やその時々の状況により異なる種類の検体を使用している.患者から採血を行う臨床の立場では,検査項目によりプレーン採血であったり抗凝固剤入りの採血であったりというよりはどちらか一方に統一されたほうが合理的であることは明らかである.どちらかに統一する場合には,多くの検査に対応できるという点から,抗凝固剤入り血漿検体が現実的と思われる.
血漿検体を輸血検査に使用するに当たり,血漿検体と血清検体とで,得られる反応に違いがあるか否か,より具体的にいえば,輸血副作用を引き起こす可能性のある抗体が存在する場合,確実にそれを検出できるか否かが最も重要な問題となる.
これらを踏まえて,交差適合試験も含めた輸血検査を血漿検体で行う場合に考慮すべき事柄を確認して回答としたい.
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