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はじめに
心血管疾患患者における心臓リハビリテーションは心血管イベントの抑制に寄与し重要である1).心臓リハビリテーションを行う際には心肺運動負荷検査(cardiopulmonary exercise test:CPX)を施行し,得られた結果をもとに運動処方する.CPXでは呼気ガス分析で求めた換気性代謝閾値(ventilatory threshold:VT)で嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)を推定する.ATを超えた強度の運動ではアシドーシスが進行するとともにカテコラミンの分泌が亢進するため,心機能の低下した症例では特にATの範囲内で運動処方する必要がある.しかし,CPXには高価な機器を要するため施行できる施設は限られる.また,VTの決定に際しては指標が多く専門的知識を要する.Oscillatory ventilationを呈する症例も存在するため,しばしば判定が困難である2).
ATを決定する他の手法として,運動中に血液乳酸値を断続的に測定する手法がある3).嫌気性代謝に切り替わるタイミングで血液乳酸値は上昇する.上昇地点は乳酸閾値(lactate threshold:LT)と定義され,LTにおける運動強度を指標にATを推定することができる3).しかし,このような方法は侵襲的であり汎用性に乏しく,日常臨床でも用いられていない.
近年,汗中の乳酸値を測定するデバイスの開発が進み,運動強度の増加に伴い汗乳酸値は上昇することが示されている4).しかし,汗乳酸値の上昇地点[汗乳酸性作業閾値(sweat lactate threshold:sLT)]と嫌気性代謝閾値の関連性は検討されていない.今回,われわれは株式会社グレースイメージングと共同開発した汗乳酸センサ(図1)を用いて,汗乳酸性作業閾値と嫌気性代謝閾値の関連性を検討した5).
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