増大号特集 できる整形外科医になる! 臨床力UP,整形外科診療のコツとエッセンス
column
整形リウマチ医のすすめ
田中 栄
1
Sakae TANAKA
1
1東京大学医学部整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
pp.510
発行日 2023年5月25日
Published Date 2023/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202630
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わが国の関節リウマチ(RA)診療は,欧米とは異なった独自の発展を遂げてきました.大きな特徴として,歴史的に整形外科医がRA患者の外科療法だけではなく,薬物療法や装具療法,そして理学療法や物理療法などの保存療法,さらにさまざまな基礎研究にも深く関与してきたことが挙げられます.
さて1999年にわが国でもメトトレキサートが認可されたのに続き,生物学的製剤やJAK阻害薬など有効性の高い治療薬が次々と登場して,RA診療は全く異なるステージに突入しました.それまでのゴールであった「症状の緩和」ではなく,疾患活動性の制御,寛解導入,そして関節破壊防止が現実的な目標となりました.また早期診断・早期介入の重要性が強調され,treat to targetの号令のもとに,早期からの強力な薬物介入による寛解・低疾患活動性という目標達成がRA治療のゴールドスタンダードとなりました.このような中で,RA薬物療法も極めて専門性の高いものとなり,また有効性の高い治療薬は感染をはじめとした重篤な合併症を伴うという懸念から,整形外科医にとってRA診療のハードルが上がったことは否めません.さらに超高齢社会の到来による変形性関節症や腰部脊柱管狭窄症,そして骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折など,加齢に伴う疾患の増加は,整形外科医の需要をも急増させ,多忙のためRAの薬物療法にまで手が回らなくなったことも整形外科医の「リウマチ離れ」の原因として重要な点です.
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