境界領域/知っておきたい
糖尿病足潰瘍発症リスク評価
澄川 真珠子
1
Masuko SUMIKAWA
1
1札幌医科大学保健医療学部
pp.268-272
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201939
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はじめに
糖尿病の治療目標は,糖尿病の合併症の発症,進展を阻止し,ひいては健康な人と変わらない寿命の確保,健康な人と変わらない人生を目指すことである1).とりわけ,自立歩行できるかどうかは糖尿病を持つ人の生活の質に影響する.
糖尿病性足病変の病態構成要素は,神経障害,虚血,感染である.糖尿病患者の足潰瘍は再発が多く,難治性で7〜20%が下肢切断となり,糖尿病患者の足切断の80〜85%は足潰瘍が先行する2).また,糖尿病性足病変に関する国際ワーキンググループの調査3)では,足潰瘍の既往がある人のうち,3年後に潰瘍を有する人は55.8%,切断に至る人は20.9%と報告されており,足潰瘍の発症を未然に防ぐことが重要である.わが国では,2008年から看護師など医療者が行うフットケアの診療報酬として「糖尿病合併症管理料」が加算されるようになった.このことからも糖尿病患者の足病変の危険因子を見極めていくことは医療者の責務である.
糖尿病性足病変に関する国際ワーキンググループの予防ガイドライン4)(表1)では,足潰瘍発症リスクを4段階評価し,リスクが低い人に対しても,1年に1回はスクリーニングをすること,感覚低下や末梢動脈疾患を有するなどリスクの高い人には,足潰瘍の発症を防ぐために適切なセルフケア教育を行い,適切な履物を選択するといった医療者によるフットケアの内容と頻度を提示している.国際的な動向を踏まえながら,簡便で苦痛を伴わない神経・血管障害を評価する指標を取り入れた足潰瘍発症リスク評価表について紹介する.
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