特集 骨折に対する積極的保存療法
緒言
神宮司 誠也
1
Seiya JINGUSHI
1
1九州労災病院 整形外科
pp.218
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201930
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
新型コロナウイルス感染拡大に注目が集まっているが,わが国は切実な人口問題も抱えている.団塊世代が75歳となる2025年に向けて,感染拡大以前から医療の効率化が進められてきた.絶対的かつ相対的にも高齢者が多くなっており,高齢者骨折患者が整形外科入院手術患者の1/3を占めるようになっている1).80〜90歳以上の患者も多く,しばしば内科疾患や認知症を合併しているため,周術期における老年病専門医を含む多職種連携が強調されている.加えて,骨の脆弱性ゆえに骨折部の固定困難さや癒合不全など局所合併症の問題もある.従来の骨折治療に加えて,生体内に起こる治癒反応を,保存的に,かつ積極的に刺激する治療オプション(骨折に対する積極的保存療法positive conservative treatments for fracture repair:PCTFR)の併用が今後より必要になると思われる.
低出力超音波パルス(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)照射はPCTFRの1つで,仮骨形成における細胞分化促進により治癒期間短縮や癒合確実性を上げる効果がある.本邦では,多くの基礎研究結果を背景に,比較的よく使用されている.リアルワールドデータの1つである,ナショナルデータベースを用いた解析では,高齢者脆弱性骨折増加に伴って術後LIPUS治療数が多くなっており,その使用頻度も高年齢ほど多いことが明らかになっている2).骨折患者の早期社会復帰の需要が窺われるデータである.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.