増大号特集 臨床整形超音波学—エコー新時代、到来。
4 マスターへの道〈神経をセメる〉
1 末梢神経超音波を読み解くための考えかた
仲西 康顕
1
Yasuaki NAKANISHI
1
1奈良医科大学整形外科学
pp.561
発行日 2020年5月25日
Published Date 2020/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201689
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はっきり言ってしまおう.運動器に対する超音波診断は,特に末梢神経においては静止画をみても,何がどうなのかよくわからないことはめずらしくない.では,熟練者は適当に所見を言っているだけなのだろうか? いや,それも違う.運動器超音波に熟練した検者は,かなり強い確信を持って各組織を同定し,所見を述べ診断を下すことが可能であると私は考える.では,どうやって運動器超音波の熟練者は超音波診断装置から所見を得て治療に生かしているのだろうか.それは,プローブを連続的に動かしながら,自らの脳の中に患者の三次元的な解剖を再構築しているのだ.超音波プローブの操作は,まるで木立の間にいる動物を観察するのに似ている.静止画では木によって隠されているために,首や後ろ足など一部は隠れて全体像はみえないであろう.しかし,観察者が木の間から角度を変えて歩き回り,別々の位置で頭から首,前足,胴体,後ろ足,尻尾を見れば,そこから組み立てられる全体像を頭の中に組み立て,その動物の特徴を理解することができるだろう.末梢神経の超音波診療には柔軟な想像力が欠かせない.そして想像力を働かせるための土台として重要なのが,正常解剖と各部位における末梢神経の像を熟知していることである.最初はどれが末梢神経なのかわからない初学者であっても,トレーニングによって必ず身に付けることのできる能力であると私は考える.
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