増大号特集 臨床整形超音波学—エコー新時代、到来。
3 ネクストステップ〈慣れてきたら困ること〉
—column—マイエコー,買っちゃいました
橘田 綾菜
1
1東京女子医科大学八千代医療センター整形外科
pp.560
発行日 2020年5月25日
Published Date 2020/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201688
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エコーに向かって思わず深くお辞儀をした症例がある.症例は1歳半の男児.「お熱がでて,左腕を使わなくなりました.」と母.よくみると左手が腫れ熱感も強い.採血で炎症反応が高値であり,化膿性手関節炎を疑い穿刺を試みるべきだと判断した.しかし元々肉付きのよい手はさらにパンパンに腫れあがり,どこが関節かわからない.すがる思いでエコーを当てると,関節包や周囲の軟部組織が腫れていることがわかった.エコーガイド下で関節液を穿刺吸引後,抗生剤投与を開始し緊急手術まで待機することが可能であった.夜遅く院内に整形外科医は自分のみ,成長障害のリスクが頭をよぎる.そんな危機的状況を,エコーが救ってくれた.
マイエコーとの出会いは,2019年初夏の頃である.4月から当大八千代医療センターで小児整形外科外来を開設したが,エコーを常時使用できる環境ではなかった.運動器診療に欠かせないツールであるといわれているエコーだが,小児も同様で,発育性股関節形成不全(乳児股関節脱臼)をはじめとし,さまざまな疾患に使用することができる.すぐエコーを当てることができないストレスに悩まされ,購入へ至った.必要に迫られ購入したエコーであったが,今では,人との出会いを繋げてくれる存在となっている.エコーを中心として,出会う人の輪が広がり,人生がより豊かで楽しくなったように思う.
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