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あとがき
土屋 弘行
pp.416
発行日 2017年4月25日
Published Date 2017/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200807
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皆さんは,“singularity”という言葉をご存知でしょうか? 人工知能(AI)が人類の知能を越える転換点,または,それらがもたらす世界の変化のことを言うそうです.AIやVR(ヴァーチャルリアリティ)技術,ロボット技術などが急速に進化し,機械の知能が人間を超える日が近づいてきています.医療の領域でも,内科診断学,放射線診断学,病理診断学に大きな進歩をもたらすでしょうし,治療もエビデンスレベルと推奨度を参考にしながら選択していけるようになるでしょう.そこで,singularityを念頭に置いて,われわれ整形外科医は,よい部分を受け入れつつも整形外科医としてのアイデンティティー,存在価値を死守していかねばなりません.いまから準備が必要だと思っています.
さて,視座では,広島大学の安達伸生教授が,医学博士の学位を「足の裏の米粒」に例えています.これは,おそらく古くから言われていることでしょう.医学博士を取得すべく,大学院に入学する人が減少しているのは,新たな初期研修制度が始まってから顕著になっています.医学研究は,医学の進歩のためにはなくてはならないものです.私は若手医師に,「医学博士の価値は?」と問われますと,即座に「医学の進歩に欠かせない研究をすることである! 君の人生を賭けてみないか!」と,答えています.現状では,給料のアップや地位向上に即座につながるとは言いにくいのですが,専門医取得とともに医学博士取得も,医師たちの何らかのインセンティブにつながるようにすべきです.日本発の医学医療の発展を切に願うばかりです.
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