連載 慢性疼痛の治療戦略 治療法確立を目指して・5
NSAIDsの位置付けと使い方
園畑 素樹
1
,
馬渡 正明
1
Motoki SONOHATA
1
,
Masaaki MAWATARI
1
1佐賀大学医学部整形外科
pp.166-168
発行日 2017年2月25日
Published Date 2017/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200751
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はじめに
非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)は鎮痛薬として広く用いられてきた.生薬のNSAIDsは紀元前にさかのぼるとされているが,商品としてのNSAIDsの発売は1899年のアスピリン®(アセチルサリチル酸)が初めてである.NSAIDsの主な作用機序は,炎症,疼痛,発熱の原因の1つであるプロスタグランジンの合成を抑制することにある.炎症部位でのプロスタグランジンは,アラキドン酸カスケードの産物であるが,NSAIDsはアラキドン酸カスケードの律速段階の酵素であるシクロオキシナーゼ(cyclooxynase:COX)を阻害する.COXにはそのアイソザイムとしてCOX-1,COX-2が存在し,消炎鎮痛にはCOX-2により合成されたプロスタグランジンが関与し,COX-1によって合成されるプロスタグランジンは胃・十二指腸粘膜の保護,トロンボキサンは血小板機能のサポートをしている.そのため,COX-2選択的阻害薬がより胃粘膜障害が少ないとされているが,心血管イベントのリスクを高めるとの指摘もある1).
NSAIDsの鎮痛薬としての有効性はよく知られているが,近年,その副作用についても注目されるようになってきた.特に,運動器の慢性疼痛を抱える患者の多くは高齢者であり,予備能の低下により副作用が重篤化しやすい点が問題である.NSAIDsの位置付けと使い方について,各種ガイドラインを参考に概説する.
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