最新基礎科学/知っておきたい
個体レベルのシステム生物学
張 千惠
1
,
洲﨑 悦生
1
,
上田 泰己
1
Chie CHO
1
,
Etsuo A. SUSAKI
1
,
Hiroki R. UEDA
1
1東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻薬理学講座システムズ薬理学教室
pp.180-183
発行日 2016年2月25日
Published Date 2016/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200470
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システム生物学とは
システム生物学とは,生命をシステムとして理解することを目的とした学問である1,2,3).「システム」とは,定義された目的を達成するために秩序立って組み合わされた複数の要素の集合体である.例えば,車のエンジンが燃料からピストンの動力を得てタイヤを回すことができるのは,さまざまな部品が組み合わさり,定義された動的出力(ダイナミクス)を達成するよう駆動するシステムだからである.同じように,システム生物学では,生物を構成する要素とそれらの相互作用を包括的に調べることにより,システム論的にどのようにして生命が成り立ち機能しているのかを理解しようと試みる.
システム生物学における研究の具体的なプロセスを説明する.まずはじめに(1)システム構成要素とそのつながり(相互作用)を包括的に同定する(同定).次に(2)システムのふるまいを知るために,システムのダイナミクスを正確に測定する(解析).そして(3)システムのダイナミクスがどのようなプロパティで動いているのか仮説を立て,摂動をかけた時に予測通りになるか検証する(摂動).最後に(4)人工的に一からシステムを再構成し,同じ挙動を示すかを確かめることで理解を完全にする(合成).これらのプロセスは実際に哺乳類の時計遺伝子ネットワークの研究4)などで用いられており,哺乳類の概日時計遺伝子ネットワークをシステムとして理解することに貢献した.
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