特集 世界にインパクトを与えた日本の整形外科
外傷性肩関節脱臼に対する外旋位固定
井樋 栄二
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1東北大学大学院医学系研究科医科学専攻外科病態学講座整形外科学分野
pp.1150-1151
発行日 2015年12月25日
Published Date 2015/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200395
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概要
肩関節は外傷性脱臼が最も起こりやすい関節である.肩関節は脱臼しやすいだけでなく,一度脱臼を起こすと再発しやすいという特徴がある.とくに若年者であるほど再脱臼率が高く,10歳以下での再脱臼率は100%という報告もある.再脱臼率が高い原因の1つとして固定肢位に問題があると考え,固定肢位における損傷部位の整復状態を調べたところ,これまでの内旋位固定では損傷部位の整復が十分に得られず,外旋位にすることでよりよい整復が得られることが判明した.この結果に基づき,外旋固定を行うことでこれまで無意味と言われてきた保存療法による再脱臼率を下げることに成功した.しかし,手術治療ほどの好成績は得られず,手術と保存療法の適応については個々の症例の背景因子(年齢,性別,スポーツの種類とレベル,シーズン中か否か,固定やリハビリテーション(リハ)などの治療に対する理解度と協調性,経済的環境など)を考慮し,患者,家族と十分に相談し,納得したうえで決定する必要がある.また,固定する場合の外旋位という肢位は,患者にとっては快適な肢位ではなく,患者の順応性が低い点が問題視されている.現在,よりよい肢位の探求と快適性との両立を図る研究を続け,より完成された保存療法の確立を目指している.
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