連載 運動器のサイエンス・13
慢性疼痛増加の機序を探る
半場 道子
1
1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
pp.370-372
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200183
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上位脳の神経回路網で慢性疼痛への転化が起きる
慢性疼痛はその発生機序によって,侵害受容性,神経障害性,非器質性(心因性)疼痛の3つに分類される.本シリーズでは神経障害性の慢性疼痛を第11〜12回に取り上げ,慢性化の要因として,脱髄とアロディニア,二次ニューロン(脊髄後角や三叉神経脊髄路核尾側亜核)における長期増強(long-term potentiation)7)を挙げてきた.
しかし慢性化の要因は,末梢神経や脊髄後角のみにあるわけではなく,脳神経回路網における機能的/解剖学的な変容が,慢性化に大きな影響を及ぼしている.慢性疼痛では,痛みという中核症状の周りに,情動的症状が共通してみられる.睡眠障害,うつ状態,食欲と意欲の低下,慢性的疲労感,孤独感,不安感などである.これら多彩な症状は,感覚・弁別系の機序だけでは説明つけようのない変化である.
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