連載 運動器のサイエンス・9
慢性疼痛増加の機序を探る
半場 道子
1
1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
pp.1094-1097
発行日 2014年12月25日
Published Date 2014/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200068
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世界各国が悩む慢性疼痛の増加
社会の超高齢化に伴い,世界各国では共通して2つの脅威に直面していると,第1回の冒頭に記した.①認知症患者の増加と②慢性疼痛の増加である.本号からは慢性疼痛の増加を取り上げる.
慢性疼痛の中でも,筋骨格系に起因する慢性疼痛の患者数は大きく,平成17年度(2005年)の時点で約500万人,医療費概算は約2兆円と算定された(厚生労働省調査).急ピッチで進む社会の高齢化に比例して,変形性関節症患者は平成20年度(2008年)には800万人(推定),人工膝関節置換手術の年間例数は平成21年(2009年)に7万を超え,治療費は700億円と概算されている.運動器の慢性疼痛は日常生活の自立機能にも影響を与え5),変形性関節症や腰痛は,要支援/介護度の面で患者の訴えの第2位を占める.本稿ではこのような現状を背景に,運動器疼痛が慢性化する機序を,最近の神経科学から探っていくことにする.
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