連載 運動器のサイエンス・15
慢性疼痛増加の機序を探る
半場 道子
1
1福島県立医科大学医学部整形外科学講座
pp.544-546
発行日 2015年6月25日
Published Date 2015/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200242
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慢性疼痛の謎解きに迫る mesolimbic dopamine system
連載第13〜14回では,慢性腰痛の異常な神経回路網形成と自発痛の実態について,脳画像法による解析結果を記述した.痛みを経験した誰もが慢性疼痛に転化するわけではなく,多くの人は適切な治療を受けて痛みが軽減し,再び静穏な日常に復している.しかし,同程度の痛みがあって同じ治療を受けたにもかかわらず,一部の人は慢性疼痛に転化し,自発痛,睡眠障害,うつ状態などの業苦を背負ってしまう.両者の明暗を分けたものは何か,慢性疼痛に転化させる分岐点はどこか,これは痛み研究の長年の謎であった.
慢性疼痛の謎解きの一焦点として,mesolimbic dopamine system(中脳辺縁ドパミン系)による痛みの制御機構が注目を集めている5,7,9).このdopamine systemの機能低下によって痛みが慢性化し,外傷や手術などをきっかけに,異常で病的な痛みに転化することがわかってきたからである.本稿ではdopamineやopioidなど,高次脳機能に関与する神経伝達物質の代謝や活性について,慢性疼痛研究の最近の進歩を伝えたい.中心となるのは大脳基底核注1),辺縁系注2),中脳,脳幹など,進化的に古い脳器官が行う痛みの制御機構である.
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