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はじめに
私が整形外科医として関節リウマチ(RA)患者の診療を始めた頃,当院内科に全身の疼痛と強い疲労感で動けないという救急患者が搬入されてきた.内科から相談を受け,関節の腫脹も多く,血沈,C反応性蛋白(CRP)とも高値であることから,RAのコントロールとともに全身の精査が必要と返答した.入院後,血沈,CRPは改善したが全身の疼痛,易疲労感はあまり改善せず,その後,患者は自殺企図を起こしたが,関節機能障害が強かったため大事には至らなかった.精神病院に転送したが,患者はRAに合併したうつ病であった.このことから,RAに合併したうつ病診断が重要であることを痛感した.
疼痛の種類としてⅠ)侵害受容性疼痛(nociceptive pain),Ⅱ)神経障害性疼痛(neuropathic pain),Ⅲ)心因性疼痛(psychogenic pain)があり,RAの疼痛は関節炎や関節破壊による侵害受容性疼痛が主なものと思われるが,頚髄症や絞扼性神経障害による神経障害性疼痛や心因性疼痛も含まれていることがある.われわれ整形外科医にとっては特にⅢ)心因性疼痛はなじみがうすく,これに対する配慮が必要である2).心因性疼痛の中で抑うつ状態(うつ病)のRA合併は報告者によりばらつきがあるものの,われわれの調査では,後述する簡易うつ病テストのself-rating depression scale(SDS)で,287例中軽症抑うつ状態を含めて113例,約39%に,また別のcenter for epidemilogic studies scale for depression(CES-D)を用いた調査では,CES-D16点以上を抑うつ状態ありとした場合,190例中45例約24%に抑うつ状態が認められた12-14).このように,心因性疼痛の中でうつ病のRAへの合併は,統合失調や転換性障害に比較してきわめて高い12,14).また最近,RAの治療戦略の中に生物学的製剤(biologics)が組み込まれ,RAの治療は寛解を目標にタイトコントロールやtreat to tagetが推薦されている.この時に用いる寛解基準(例えばBooleanによる評価)や疾患活動性評価法の中に,患者が訴える疼痛や患者の全般評価の項目が入っている場合,RAの炎症が消失していても,なかなかこれらの寛解基準を満足できない場合も多いことが明らかになってきている8).今後,この面からもRAにおける抑うつ状態や心因性疼痛の研究は重要になると思われる.
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